織楽浅野 帯の魅力
不易を知らざれば
基立ちがたく
流行を知らざれば
風新たにならず
こんにちは、籔谷です。
上は浅野さんが作られている冊子にある言葉ですが、
着物の世界はまさに「不易流行」であると、日々感じます。
澤屋の立ち上げにあたり、結城に結城の帯はもちろん良いけれど、着ていけるシーンを
広げてくれる、結城の新たな表情を引き出してくれる結城以外の帯も扱いたいと思った時に、
まず浮かんだのが織楽浅野の帯でした。
古典をベースに持ちながら、センスの良さを感じさせる帯。今の時代の着物。
その後、それぞれ先代からの親交があると知り、厳寒の京都を訪ね、お話を伺いました。
そこで共感した、というのは、共感という言葉は自分の経験値からすると畏れ多い言葉では
ありますが、浅野社長のお話には強く共感しました。
昔から思っていて、でもどこに行けば深められるのかわからなかったものに、
着物の世界で出会えた。そんな感動がありました。
それは何よりも「素材感」を重視する、ということです。
素材感の重視には、素材=自然の表情への注視がベースにあると思います。
私自身は木の彫刻作品をひたすら観ていた経験で得た
「目」が結城紬に留まったところから着物との出会いが始まっているので、
「素材感」なのだ、という浅野社長のお話に感動して、多いに共感して、
この帯から先々も学んでいきたい、と澤屋での取扱を決めたのでした。
素材感の重視とは、例えば上の写真のように、無地が平坦でないこと。
そこが何よりも現代的であり、結城紬との相性を支えている部分でもあると思います。
そして素材に注視する目は同時に、古典文様の意匠化にも強く発揮されていて、
浅野の帯のデザインはとても気が利いています。
古典を基としながら、線や色に現代的な精度がある様は、まさに不易流行です。
冒頭ご紹介した言葉が載っている冊子には
「法隆寺伝来 蜀江錦 赤字格子連珠華文」という飛鳥時代(七世紀)に作られた
織物の写真が載っています。それは浅野社長が所有するものであり、
先日のお話の会ではこちらの実物も見せていただきました。
その布は、千三百年以上前に作られたとは思えないほど鮮明で
美しい色をしていました。
国家プロジェクトとして染織が行われていた時代だから作れたものだといいます。
浅野社長は「美」について問うため、そこから学ぶものとして蜀江錦を
お持ちになり、私たちにも見せてくださるのだと思います。
千三百年前の織物から得たものが反映されている帯。
ただ図案をトレースするということではなく、その美しさの源泉を探り、
本質を常に問いながら作られている帯。
織楽浅野の帯はそういう帯であり、
それをアートピースとして飾るのではなく、自らまとい装えるのが
着物を着る魅力の一つだと思います。
センスの良さとは情報量ではないか、と最近思っています。
写真と実物であれば、実物の方が数倍多くの情報量を持っています。
蜀紅錦を知っていること < 写真を見ること < 博物館で見ること
<所有すること、であり、もちろん浅野社長がお持ちのものは
蜀江錦ひとつではありませんが、それを一つ持っていることの
情報量には、それだけで凄まじいものがあると思うのです。
織楽浅野の帯にはそうした圧倒的な情報量に裏打ちされた、
多少のことでは揺るがせない、盤石なセンスの良さがあります。
展示会も後半。どこにもまだ出ていない新作を一点、
追加で送っていただいています。
この機会にぜひ、店頭でお手にとってご覧ください。
【結いのもの -特別な結城紬と織楽浅野の帯- 】
平成28年9月3日(土)~11日(日)火曜定休
・本場結城紬 新作 雲ぼかしに縦絣[雨奇晴好]
・石下結城紬 新作 付け下げ感覚の縦絣[エバーラスト]
・織楽浅野 九寸名古屋帯 澤屋別誂え
・織楽浅野 新作帯各種
・松原智仁 帯留め(9月一杯の取扱)