日本の絹織物の原点を今に伝える布

結城紬は、結城の地で古来から織り継がれてきた伝統の絹織物です。

ふんわりと軽く暖かく、素朴さと上質さを兼ね備えた風合いは、
古くから多くの人々を魅了してきました。

結城紬の美意識は素材(自然)に働きかけ、その良さを最大限に引き出すことにあります。
繭を柔らかくしてから広げて「真綿」という状態にし、
そこから丁寧に糸をつむいでいくことで、結城紬ならではの風合いが生まれるのです。

木工、金工、いずれも手仕事により素材の力が引き出されたものには、
時間の経過とともに美しくなる経年変化が見られます。

結城紬は製織のために糊付けを行うのですが、この糊が湯通し・洗い張りによって落ち、
着込むことで真綿のケバがとれる、その繰り返しのなかで、
布は絹本来の光沢をみせていきます。
そこにはハっと息を飲む、時間によって育まれた美しさがあります。

また、良い風合いの結城を着ている方にお聞きすると、
お母様、お祖母様から譲られたという方がよくいらっしゃいます。全身を包み込む布は、
着ていた人の思い出とともに温もりも後世に伝えます。

素材の力が生きている上質な布は、時代の変化の中でも古びないため、
世代を超えて人と人を結ぶ力があるのです。

気候風土、歴史、日本の文化・・・様々な背景を持つ重みのある布。
こうした布とともにある暮らしは、本質的な意味で豊かなものではないでしょうか。