澤屋のブログ

穀雨の手つむぎ糸

 

こんにちは、黒澤です。

 

今年は例年になく桜の咲く時期に霙や雪が降るなど、全国的に異常気象に見舞われてしまいました。皆さんも体調の変化には気を配られているのではないでしょうか。暖かいような、寒いような、どこか身体が気候についていかないような時期。

 

手つむぎ糸も同様に気候、温度、湿度など自然環境の変化により微妙な変化を起こしています。今の時期は二十四節気では穀雨の時期にあたりますが、どのような変化が手つむぎ糸にあるのか。絹の原料となる繭を煮込んで、やわらかくなったものを手で広げ袋状にしたものを袋真綿と呼び、その真綿を丹念に手でつむぎ出すことで、手つむぎ糸が出来上がります。手つむぎ糸はこのような絹の綿から糸をつくりだすことにより、絹本来の輝きを内包しながら、軽くて保温性の高い生地を生み出していきます。

 

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糸の太さは不規則でありながら、手の技術によって繊維の微妙なうねりをかたちづくり、そこには繊細な毛羽立ちが無数に存在しています。

 

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澤屋の反物や帯を高機で製作している森昭さんは、季節によって手つむぎ糸が常に微妙な変化をしていると言っています。特に穀雨の時期は手つむぎ糸が毛羽立つそうです。織りの工程において手つむぎ糸は機に吊られるわけですが、この毛羽立ちにより経糸の上糸と下糸に摩擦と絡まりが生じ、糸の上下する動きは鈍くなり、産地では「口が開かない」という状態になってしまいます。状況によって糸が切れてしまう。毛羽立ちが引き起こす糸切れは、その都度丁寧に糸を結ぶことにより、織れる状態に回復させなければなりません。毛羽立ちをなるべく防ぐには織る工程の前段階で何度か糊付け(小麦粉をお湯でとかしたもの)を行います。糊付け具合が糊の分量や付ける回数、そして季節と天候に大きく左右されてしまうとも森昭さんは言っています。

 

穀雨の時期は春雨が百穀を潤すことで名づけられたそうですが、手つむぎ糸にも微妙な変化をもたらしているようです。

 

 

 

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