澤屋のブログ

渡辺染色店

 

こんにちは、黒澤です。

今回は澤屋でも大変お世話になっている栃木県小山市の渡辺染色店の渡辺智文さんの優れた技法についてのお話です。ついつい店頭に商品が並びますと色や柄の話し、もしくは機屋さんの話しにはなると思いますが、染屋さんの話しはなかなか出てこないように思います。

 渡辺智文さんは創業明治40年の渡辺染色店四代目になります。結城の染色業界の中では50歳と産地では若手に入りますが、今後の結城をこれからも担っていく方です。

渡辺紺屋

結城では糸を染める代表的な工程に、浸染といって糸の束を染料に浸して染める方法(主に色無地や地糸)と絣括りをした糸の束をたたく、たたき染め(主に濃地の絣糸)という方法、糸に直接染料をすり込む直接染色法(主に淡地の絣糸)があります。この方法のなかで実際に染屋さんが行う工程としては、浸染とたたき染めになります。

渡辺2

実はこれ以外の染め技法として、伝統的な編みボカシがあります。この技法は糸の段階で糸を編み、染料に編んだ糸の束を浸していく方法です。渡辺さんは長年積み重ねた経験を基にして、先代より受け継ぐ編みボカシをより現代的に進化させた方法にたどり着きました。全体的な色合いとしては一見ボカシのようで、無地感覚。通常の編みボカシでは、地色の部分(無地の部分)とボカシ部分の色の差が強調されているため、色の対比がはっきりと現れますが、渡辺さんの技法は通常の数倍の手間をかけて、ボカシのように見えて、無地感覚を意識した色の繊細な濃淡を表現しています。

渡辺3

とても繊細な色の表現であるため、その時の照明や自然光の角度によっても印象が異なって見えます。着物の柄や色が主張し過ぎるものは多々ありますが、けして主張し過ぎることなく、着る方をより一層引き立てるような感覚に仕上がっています。既に色無地や絣をお持ちの方にご提案したい極上の一品です。

 

残念ながら写真では描写できないほどの繊細さであるため、ぜひお店に足を運んでいただき、一言「ボカシのようで、無地感覚の着物はありますか?」とお声をかけてください。

お越しいただいた時の季節、天候によってもお顔映りが様々に変化して、着る楽しみを演出してくれます。

 

 

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