澤屋のブログ

産地の職人と、自分の着物をつくる

オーダーメイドサービス

 

こんにちは。

澤屋の籔谷です。

 

先日、糸から染める結城紬オーダーメイドをご注文のお客様を案内して、

染めの色確認へ行ってきました。

 

澤屋を出発して、車で工房まで。

車窓からの景色はまだ冬で、枯れ草や枯れ木の乾燥した様子に

北関東のからっ風、結城らしい風土を感じました。

今なお結城紬が作られている、歴史ある産地の風景には

視覚から感覚的に訴えるものがあります。

 

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工房では、ご自身のものになる反物の糸が今まさに染められている所を

お客様と一緒に確認しました。

職人さんに色々なお話を伺いながら、見学すること数十分。

 

濡れた状態と乾いた状態の色の違い。

糸は濡れているけれど、見本は乾いている、その差をどう埋めて色を合わせるのか。

「染める」という工程の中にさらにいくつもの段取りがあること、

職人さんが築いてきた方法論を目の当たりにします。

 

通常の産地見学会でも、お客様は結城紬の製作工程を驚きの眼差しで見られるのですが、

「自分のものが染められている」と理解の度合いが格段と増すように思います。

私は隣にいるだけでしたが、お客様の中に産地のこと、職人さんのこと、結城紬のことが

染みこむように伝わっていることが感じられました。

 

オーダーメイドは、出来上がっていない状態のものを購入することですから、

思った仕上がりにならないというリスクがあります。

もちろん、色の再現性への自信のもと展開するサービスですが、

ある程度着物や結城紬に触れていないと「イメージと実物の差を埋める」ことができずに、

注文通りであっても「思っていたイメージと違う」となってしまうことも起こりえます。

 

リスクがあるということは、店側にも、お客様にも要求することが多いということで、

上級向けなサービスであることは間違いありません。

糸から染めるオーダーサービスは他の産地にもないと思いますので、

澤屋はもちろん創業100年の奥順にとっても、織物産地にとっても、新しい試みです。

ただ難しいことは、それだけ出来上がりの満足度も高いものです。

 

織物は染め物と違い、ロット数が多いため、糸から染める個人向けオーダーメイドというのは

ほぼできないと言って良いと思います。

結城紬産地でそれができるのは、全て手仕事だからこそ適う少量生産のためです。

 

誰にでもお勧めするものではありませんが、

せっかく一枚誂えるなら、糸の色から作ってみたくなりませんか。

「自分のオーダーで」作る結城紬には、どんなに細かい絣模様の高額品にもない、

金額だけでは手に入らない価値があります。

 

完成された商品を選んで頂くよりも、結城紬について時間を割いていただき、

たくさんのことを理解していただかなければいけない。

その時間の中できっと、産地のこと、気候風土、悠久の歴史が身体に

染みこんでいくようなタイミングが訪れると思います。

「もの」の背景にあるものが、文字情報としての理解ではなく、身体でわかること。

それを含めての「もの」を所有できること。

それこそが、このオーダーサービスの価値では、と考えます。

 

気になった方はぜひ、店頭にてお声掛け下さい。

 

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