澤屋のブログ

「耳」が語りかける

 

つくり手とのやりとりを主に担当している黒澤です。

今回はきものにお仕立てしてからでは表に現れない「耳」についてお話をしたいと思います。

 

皆さんがお店に並べられているきものをご覧になるときに意識して「耳」を見たことはありますか。

IMG_8496

 

そもそも「耳」とは何を指し示す言葉なのか。

 

産地では、反物の両端に一般的に白色のたて線の縞が織り上げられています。このたて縞のことを産地では「耳」と呼びます。実は本場結城紬の平織においては「耳」はとても重要な意味をもっています。産地で行われている本場結城紬の検査条件には、平織については「耳」がなければ検査は受けられません。逆に縮織には「耳」がなく、平織には必ず「耳」があります。

 

もうひとつは、つくり手の技術のことですが、「耳」がきれいに揃って織り上げられているものは技術が高い証明になります。

 

IMG_8502

 

地機では緯糸を杼という道具で左右に入れて打ち込み、その後に筬という道具でも打ち込みます。この工程をくり返していくなかで、いかに一定の打ち込みを維持しながら、きれいに「耳」を揃えて織るかということはつくり手の技術が試される部分になるのです。

 

生地の最終形態がきものであるわけですから、着る方と出来上がった生地が良い関係であり続けたいと日々模索しています。

 

「耳」が語りかける部分も、そのひとつの価値基準であるかと思います。

 

いま、澤屋の店頭に並んでいる反物や帯は、生地を大切にしているつくり手だけにお願いして、ひとつひとつの工程を丁寧につくっていただいています。

 

一覧