「美術工芸 啓」の帯
こんにちは、角張です。
あっという間に秋めいてまいりましたが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
本日は、今週末まで開催中の「佳日佳景-澤屋好みの付け下げ展」でお取り扱いをしている、
「美術工芸 啓(ひらく)」の袋帯についてご紹介します。
「美術工芸 啓」は、吉野啓二さんが6年前に興された京都の織物メーカーさんで、
とても真摯なものづくりをされています。
吉野さんの素材へのこだわりは、使われている糸から。
啓さんの帯に使われている絹糸は「生引き糸」と言って、生きた蚕の繭からつむいだ
糸を使っています。
その糸には独特の艶やかな光沢があり、様々な色や光を映してやさしく輝きます。
写真で付け下げに合わせている帯は、伝統柄の熨斗目をモチーフとしたものですが、
啓さんのデザインによって、とてもモダンで現代的な意匠となっています。
同じ熨斗目のデザインでも、使われている色によって全く別の個性を感じるので、
そこから1本を選び取るとなると悩ましいところ。
生引き糸にのせた色には濁りのない透明感があり、計算された色の配列・濃淡がとても美しく。
また、金銀のみで色味を抑えた帯は、箔の光を映した糸までがやわらかく輝き、
締めればまるで、光そのものを纏うようです。
現在ご案内をしている付け下げとの相性は勿論のこと、
着ていく場を選べば、布に力のある本場結城紬と組み合わせても素敵です。
金糸銀糸と紬は基本的には組み合わせませんが、素材に強い意識があり、
モダンな洋装のデザインも意識された啓の帯と本場結城紬は
本質的な部分で呼応しあうものがあるようにも感じます。
また、吉鶴文様の帯についてもご紹介を。
鶴の羽根が大胆に配置された帯で、啓さんの素材感と相俟って、とても晴れやかな印象の帯です。
まず表の図案に目が行きますが、裏地も丁寧な亀甲柄となっていて、さりげない部分にも美意識を感じさせます。
こちらはぜひ店頭でご確認を。
表裏合わせて鶴亀となり、名前も意匠の鶴と吉祥にかけた、晴れの場に相応しい縁起のよい帯です。
意匠の気持ちよいまでの潔さといい、きっと「ここぞ!」というときの一本になってくれると思います。
ここまでご紹介してまいりました美術工芸 啓の帯を扱う「佳日佳景-澤屋好みの付け下げ展」は
今週末、9月25日(日)までとなります。
啓さんの帯をこれだけ纏めてご覧いただける機会はほとんどありません。
この機会にぜひ、店頭でお手にとってご覧ください。
【佳日佳景-澤屋好みの付け下げ展】
平成28年9月17日(土)~25日(日)火曜定休