ダブルスタンダード
こんにちは、籔谷です。
先日、義妹の結婚式に行ってきました。
初めての家族イベント、相手の家の式ということもあり、色留袖を着ました。
初めての比翼仕立ての着物。振袖とも違う重みです。
生地が重いので、かなりきつく紐を結ばないとゆるゆると落ちてきてしまいます。
普段いかに楽に着ているか、結城紬がどれだけ軽くて着崩れしにくいか、心から実感。
比べてわかる結城紬の良さ。
でも色留袖も、心が高揚する、とても良いものでした。
着ていて、場をわきまえた良い大人になった気がしました。
決まりに自分を当てはめることで結婚を実感します。
成人式で振袖を着た時よりも、格=服の意味が自分に滲みました。
この場で私は新婦の兄の嫁で、新しい家と家のつきあいが始まる。
結婚によって繰り返し継がれてきた人の営みに参入していく。
決まりを守る楽しさもあります。
最近読んだ着物雑誌の記事で、昨今の結婚式はだいたいが椅子への着座だけれど
色留袖は座った時に無地に見えるから、兄弟姉妹の式でも訪問着でも良いとありました。
それにも納得しつつ、色留袖の上半身無地の控えめさは、親族の衣服として
より適しているとも思います。
柔らかものを着ると、まず生地を頼りなく感じて、色柄も派手で落ち着かないことが
多いのですが、今回はそうした居心地の悪さはなく、純粋に楽しめました。
「ザ・フォーマル」といった印象が分かりやすくて、すっかり気に入りました。
何を着るかは、それぞれの式の性格と自分の立場、他のゲストの装いに合わせることも大切です。
今回は親族のみ、女性は留袖、振袖の方が多かったので、色留袖で正解でした。
決まりがなければ一生着ないかもしれない色留袖ですが、着てみるととても良い。
そこで思ったのは、ダブルスタンダードで良いのでは、ということでした。
確たるものとして、まず今の着物の格の決まりがある。
同時に、必ずしもそれに即していなくても、きらりと光る素敵さを持ったコーディネートで
あれば可とする。咎めない。素敵なら良しとする。
あれはだめ、これはだめということは、あれも必要、これも必要ということですが、
若くして着始める場合、自分で一気に訪問着、付け下げ、紬、帯・・・と
揃えるのは難しいです。初期投資100万円からの趣味になってしまう。
お金はもちろん時間のこともあります。
焦らずに、時間をかけて見る目を養いながら、
後悔のないものを一つずつ揃えていきたいものではないでしょうか。
着物の世界の入り口に立って、もっと進んでいきたくなるのは
着物を着る場面、着た経験があってこそです。
なかなか着物を着る場面が日常にない中で、
まず思い浮かぶシーン=結婚式に、着物で行きたい。
その思いをつぶしたくないし、咎められたくないと思うのです。
澤屋の結城紬で会社後輩の結婚式へ参列した際の装い
着なれて行けば、場の読み方も身についていくものです。
それは上級の着こなし、先の長い楽しさとしてあれば良い。
これが良いけれど、それも良い。
ダブルスタンダードな緩やかさが浸透して、
「安心」して着物が着られるようになったら良いのに、と思っています。