時代は変わる
こんにちは、籔谷です。
週末のスタイリング講座に向けて、着物の格について改めておさらいをしています。
そうして感じるのは、これから着物についての決まりは確実に変わっていくであろうことです。
訪問着が生まれたのは大正時代。それまでの着物は総柄の派手なものと極端に地味なものの二つしかなかったところ、気軽に着られる華やかなものが欲しい、というニーズにこたえて三越が流行らせたものだそうです。その後戦時中、絵羽模様が禁止され付け下げができ、訪問着よりも帯合わせによる格の上下の自由度が高い、とこれも定着していきました。
明治以前は着るものそのものだった着物は、洋服の登場で「和服」と呼ばれるようになり、着姿も洋服が意識された衿合わせのぴっしりした整った形が目指されていきます。ドレスコードも、洋服のそれに対称させる必要の中から、決められていったのだと思います。訪問着の例など、売る側の論理や販売戦略もあったでしょうが、定着しているということは、それが時代に即していて、必要があったのでしょう。
大事なのは見た目の印象、おしゃれであるか、素敵かどうかと、時代に即しているか、だと思います。 訪問着や付け下げは、着物でもっとおしゃれをしたいという時代の要請の中から生まれてきたものです。近代化の中で労働が家と分離し、主婦層ができ、一般の女性が日常的に着物でおしゃれができた時代。それを格付けしたドレスコードは、ここ80年くらいのもの。着かたも決まりも、時代に沿って変化してきた大きな流れを捉えれば、 着物が全く日常着でなくなった現代、決まりは個人レベルの緩やかな移行によって、変わっていくだろうと予感します。
今はまだそのドレスコードが着付け教室や呉服屋など、着物にふれるあらゆる場所で教えられていて、決まりとして生きているので、堂々と無視してしまうのは不利益も大きいと思いますが、緩やかな編み直しは各々にすでに様々に行われているとも思います。
21日には、すでに着物が日常着ではない環境で育ち、結城紬に出会ってから着物の良さを知り、着物を着るようになった自分の実感を含めて、これからの着物の着かたについて、基本をおさらいしながら、お話したいと思っています。
一つこれだと思うのは、素敵だった、と印象に残る着姿を目指すことです。
ドレスコードをしっかり守るべき場もあると思いますし、それではやり過ぎな場もあると思います。そこは場の読み方、着かたを身に着けていくしかない。
素敵な着姿がこれからの着物を作っていくと思うので、自分もお客様へのご提案も、そこに向けて勤めていきたい次第です。